私はテクノロジーを意識的に応用した活動を行うなかでフェリックスの影響を公言しつつも、それが資料参照に過ぎないことは常に意識していた。テクノロジーが芸術のみならず生活や意識の内に浸透し続けるなかで、人間やテクノロジーの感度自体に焦点を当てるフェリックスの先駆的な試みを実際に体験することは学生の頃から夢だった。数年前にふとしたきっかけで始めたフェリックスの連絡先探しから、元ジーベック下田展久、アーティスト鈴木昭男、mikiyui、和田淳子他、彼を知る人達がするりするりとフェリックスへと繋げてくれたことは、驚きと感謝の連続であった。彼らの温かいサポートの下、最終的には厚かましくもハーレンにある自宅まで押し掛けて、本展示企画の許諾と、日本に伝わりにくい近年の精力的な活動の情報とを得る事が出来た。アーカイビングされにくい先駆者の活動を実体験する為に20年の空白を埋め、自分を含め未体験の世代をつなぐことの必要性を再認識した。そして、この意識を実行可能な静かな器を探していた時、瑞雲庵に偶然に足を運び、この穏やかな佇まいこそ企画にふさわしい場所だと実感した。本企画を採択して頂いた西枝財団の助成がなければ実現には至らなかったと感じている。