風をヘスに、テクノロジーとしての電気を斉田+三原に、水を鈴木+宮北+大城に、3つの自然が時に厳密に時に緩やかに繋がるように、来場者の思索が生まれる場を提示する。
フェリックス・へス(1941-/オランダ在住)はシンプルな機能を有する電子メディアを複数空間に展開させ、音や光そして風などの自然環境に対し、群として繊細に呼応し、有機的なふるまいを生成する環境を作品化してきた。特に蛙の合唱を思わせるふるまいの作品が良く知られている(サウンドクリーチャーズ)。群集であることがまた一つの機能として、環境と呼応する集合知のようなアートフォームは彼の活動以外にこれまで芸術の世界では聞いたことがない。現在は禅画のコレクタ/キュレータとして活動する彼は、日本の伝統素材や美意識にも造詣が深く、本展覧会では、微風にたゆたう和紙のついたヤジロベーを畳の間に拡げ、展示空間の気流を視覚化する「It’s in the air(vanes)」の関西初展示を行う。
私と斉田一樹、むぎばやしひろこのコラボレーションにより始まったmoidsプロジェクトは2006年より2つのバージョンとして具現化してきたが、常に先駆者であるフェリックスの活動から影響を受け続けたてきた。moidsは創発をテーマに、同一機能の電子音響回路の集群、環境との対話の作品化してきた。特に個と集合の飛躍に照準を当て、群のステータスにおいて、最もイマジネーションを最大化出来る芸術最小単位を、私は視覚芸術から、斉田は電子工学から、むぎこは現代思想から、探し求めてきた。本展覧会では、個との対概念として無限を設定し、電子それ自体を扱う本プロジェクトの最終形として新作展示を行う。
オープニングパフォーマンスとして、鈴木昭男+宮北裕美+大城真にテーマとして水を扱った一時をお願いしている。鈴木はサウンドアートの第一人者としてフェリックスと共に時代をつくってきた。私と同世代の大城は音を様々なかたちで扱うエキスパートである。この二人に改めて世代をつないでもらうと同時に、自然環境にあって忘れてはならない身体の意識を宮北に込めてもらう。